もし、腫瘍が見つかったら どう診断を進めていくか?
病気と戦っていくにはまず"病気"という敵がどの様な性質をしていて今後どの様に体を襲撃してくるか、ということを把握しなければなりません。何故なら効果的な攻撃方法、つまり治療法を決定するためです。ここでは適切な治療法を選択するための腫瘍診断の進め方について現在の世界的スタンダードを御紹介します。
腫瘤を発見したらTNM分類いう診断手順に従い進めていきます。
Tとは腫瘍の情報
- 1.視診
- 色、自潰の有無、形
- 2.触診
- 大きさ、硬さ、周囲組織との固着
- 3.針生検
- 肥満細胞腫・リンパ腫・メラノーマ(黒色腫)・扁平上皮癌・など一部の腫瘍以外はこの検査で確定診断することはできません。しかし、炎症などの明らかな非腫瘍性病変や、明らかな悪性所見は見出すことができます。多くはこの場合良悪はっきりした評価が不可能であり、次のステップとして組織生検で腫瘍の正体をはっきりさせます。
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【肥満細胞】 | 【リンパ腫】 | 【扁平上皮癌】 |
◎腫瘍の正体がはっきりしない時
以下の特殊器具にて組織生検を行い何の腫瘍かがはっきりさせます。
無麻酔で行えます。
・骨生検針
・Tru-cut生検針
・ジャムシディー骨生検針
4.レントゲン検査- 腫瘍の周囲への浸潤、広がりの把握
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【下顎先端】 | 【上腕骨】 |
それぞれの骨が溶解 |
5.超音波検査- 腫瘍構造の把握、周囲組織への浸潤
Nとは所属リンパ節への浸潤の有無
- 1.視診・触診
- 近傍リンパ節の大きさ硬さチェック
- 2.針生検
- リンパ節内に腫瘍細胞の浸潤がないかチェック
Mとは転移があるかどうか
- 1.レントゲン検査
- 肺、内臓への転移の確認
- 2.超音波検査
- 主に体腔内臓器の浸潤、転移の確認
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【肺転移疑い】 | 【肝転移疑い】 |
- 3.CT・MRI検査
その他
- ●血液検査
- 腫瘍の悪影響はないか、麻酔はかけられるか、基礎疾患はないか
- ●造影検査
- 腫瘍の存在、浸潤などの診断
※以上の様に診断を進めていき腫瘍の種類とその進行度が明確になってはじめて、 有効的な治療法のオプションが挙げられ、飼い主さんと治療法を決定してゆきます。